コンプライアンス態勢構築から、内部監査、社内研修、各種契約書の作成に至るまで、「不動産信託受益権」の取引を全面的にサポートします。

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内部管理態勢

内部管理態勢

金融商品取引業者に対する監督

 金融商品取引業者の監督官庁は内閣総理大臣から委任を受けた金融庁です。

 金融庁は、金融商品取引業者の業務の運営又は財産の状況に関し、公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、当該金融商品取引業者に対し、業務の方法の変更その他業務の運営又は財産の状況の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができます(業務改善命令:金融商品取引法第51条)。

 さらに、金融商品取引業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該金融商品取引業者の登録を取り消し、又は6か月以内の期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができます(登録取消処分、業務停止命令:金融商品取引法第52条)。

  • 登録拒否要件に該当することとなったとき
  • 不正の手段によりの登録を受けたとき
  • 金融商品取引業又はこれに付随する業務に関し法令又は法令に基づいてする行政官庁の処分に違反したとき
  • 業務又は財産の状況に照らし支払不能に陥るおそれがあるとき
  • 投資助言・代理業又は投資運用業の運営に関し、投資者の利益を害する事実があるとき
  • 金融商品取引業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき

金融商品取引業者に対する検査

 金融商品取引業者に対する検査は、金融庁から委任を受けた証券取引等監視委員会、または証券取引等監視委員会から委任を受けた財務局が行うことになっています。

 検査は原則として無予告で行われます。

 金融商品取引業者には検査の受忍義務があるため、検査を拒むことはできず、正当な理由なく検査官の立ち入りや資料提示を拒む等の行為は「検査忌避」に該当します。検査忌避に該当すると、刑事罰(1年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、法人にも2億円以下の罰金)及び行政処分(業務停止命令、登録取消処分)を受けることになります。

法令等遵守(コンプライアンス)態勢の構築

 コンプライアンスは「法令遵守」と訳されることが多いですが、コンプライアンス(Compliance)という言葉は「要求・命令に応じること」というのが元来の意味であり、法令を守ることだけにとどまるものではありません。

 企業も社会の中で活動する存在である以上、様々なステークホルダーからの要求・期待に応える責務を負っています。したがって、明文化された法令だけにとどまらず、ある種の倫理的な責任を含む社会規範についても遵守することも求められているのです。

 わが国金融・経済の発展のためには、公正、透明で効率的な市場の下で、金融商品・サービスが適切な方法で提供される必要があり、金融商品取引業者に対する利用者の信頼は、そのための最も重要な要素の一つである(監督指針III -2-1)ことから、金融商品取引業者には、法令や業務上の諸規則を厳格に遵守し、健全かつ適切な業務運営に努めることが強く求められています。

コンプライアンス態勢構築のポイントは次の4点に集約することができます。

  • ルール(社内規程)の策定
  • コンプライアンス担当部門(責任者)の設置
  • コンプアイアンス活動の実践(コンプライアンス・プログラム、教育研修)
  • 評価と改善(内部監査、セルフチェック)

また、平成27年5月29日に施行された金融商品取引法の改正により、金融商品取引業者に業務を的確に遂行するための「業務管理体制」の整備が新たに義務付けられました。

業務管理体制が整備されていないことは登録拒否事由に該当することになりますので、あわせてご留意ください(金融商品取引法第33条の3、金融商品取引業等に関する内閣府令第70条の2第1項、金融商品取引法第29条の4第1項第1号ヘ)。

金融商品取引法
(業務管理体制の整備)
第35条の3  金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業又は登録金融機関業務を適確に遂行するため、内閣府令で定めるところにより、業務管理体制を整備しなければならない。

金融商品取引業等に関する内閣府令
(業務管理体制の整備)
第70条の2 法第35条の3の規定により金融商品取引業者等が整備しなければならない業務管理体制は、金融商品取引業等を適確に遂行するための社内規則等(社内規則その他これに準ずるものをいう。)を整備し、当該社内規則等を遵守するための従業員に対する研修その他の措置がとられていることとする。(以下略)

内部監査

 内部監査は、金融商品取引業者の経営目標の実現に寄与することを目的として、被監査部門から独立した立場で、業務執行状況や内部管理・内部統制の適切性、有効性、合理性等を検証・評価し、これに基づいて経営陣に対して助言・勧告等を行うものであり、金融商品取引業者の自律的な企業運営を確保していく上で、最も重要な企業活動の一つです(監督指針III-1(1)④)。

内部監査の手順

 内部監査部門は、被監査部門に対して十分な牽制機能が働くよう被監査部門から独立し、かつ実効性ある内部監査が実施できる体制を構築する必要があります(監督指針III -1(1)④イ)。

 また、内部監査部門の権限や内部監査の実施手順等については、社内規程(内部監査規程)において明確に定めておくべきです。

帳簿書類(法定帳簿)の作成・保存

 金融商品取引業者は、その業務に関する帳簿書類を作成し、これを保存しなければならないとされています(金融商品取引法第46条の2、第47条)。

 業務に関する帳簿書類は、金融商品取引業者の業務又は財産の状況を正確に反映させ、業務の適切性や財務の健全性を検証することなどによって、投資者保護に資するため法令にその作成及び保存義務が規定されているものです(監督指針Ⅲ-3-3)

特定投資家制度関連

名称原本/写し保存年数
一般投資家への移行に関する交付書面写し5年
特定の個人が特定投資家へ移行する場合における交付書面写し5年
特定投資家への移行に関する同意書面原本5年

顧客交付書類等

名称原本/写し保存年数
契約締結前交付書面写し5年
契約締結時交付書面写し5年
契約変更書面写し5年
取引残高報告書 ※媒介・代理の場合は不要写し5年

内部管理に関わる帳簿

名称原本/写し保存年数
注文伝票 ※自ら売主・買主となる場合のみ原本7年
私募の取扱いに係る取引記録 ※私募取扱いの場合のみ原本10年
媒介又は代理に係る取引記録 ※媒介・代理の場合のみ原本10年
顧客勘定元帳 ※媒介・代理の場合は不要原本10年
取引日記帳 ※媒介・代理の場合は不要原本10年

事業報告と説明書類の公衆縦覧

事業報告の提出義務

 金融商品取引業者は、金融商品取引業の実績の有無に関わらず、会社の事業年度経過後3か月以内に、所定の様式により作成した事業報告書を財務局長等に提出する必要があります(金融商品取引法第47条の2、業府令第182条)。

説明書類の公衆縦覧

 金融商品取引業者は、金融商品取引業務等に関する説明書類を作成し、会社の事業年度経過後4か月を経過した日から1年間、公衆の縦覧に供しなければならないとされています(金融商品取引法第47条の3)。

 「説明書類」とは、毎事業年度終了後に財務局等へ提出する事業報告書に記載されている事項のうち投資者保護のため必要と認められるものとして内閣府令で定めるものを記載した書類とされており、具体的には、財務局長等に提出した事業報告書の写しを、金融商品取引業務等を行うすべての営業所に備え置く方法その他の方法により、公衆の縦覧に供することになります(業府令第183条)。

変更登録及び登録事項変更届出等

変更登録の申請

 変更登録とは、既存の金融商品取引業者が登録を受けている業務(第一種金融商品取引業、投資運用業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業の別)以外の業務を新たに行おうとするとき、または、登録を受けている業務を行わないこととなったとき(但し、すべての金融商品取引業務を廃止する場合を除く。)に行う申請手続きのことをいいます(金融商品取引法第31条第4項)。

 変更登録の申請は、新規登録申請と同じ様式を使用して作成する変更登録申請書、変更の内容及び理由を記載した書面並びに新たに行おうとする業務に係る書類を添付して行います(業府令第22条)。

登録事項変更届出等

 金融商品取引業者は、金融商品取引法第29条の2第1項各号(第5号を除く)に掲げる事項(登録申請書記載事項)に変更が生じた場合、変更の日から2週間以内にその旨を届け出なければなりません。

 また、業務方法書や定款の変更があった場合などは遅滞なく(金融商品取引法第31条第1項・第3項、第50条)、廃止・消滅等の場合は30日以内(金融商品取引法第50条の2)にそれぞれ届出が必要となります。

2週間以内に届出が必要なもの

  • 金融商品取引業者の加入する投資者保護基金、投資者保護団体、金融商品取引業協会、金融商品取引所の変更
  • 金融商品取引業者の商号、名称又は氏名の変更
  • 金融商品取引業者の資本金の額又は出資の総額の変更
  • 金融商品取引業者の役員又は政令で定める使用人の変更
  • 金融商品取引業者の本店その他の営業所又は事務所の名称及び所在地の変更
  • 金融商品取引業者の他に行っている事業の種類の変更
  • 金融商品取引業等に関する内閣府令第7条第3号イ、第3号の2イ及び第4号から第9号までに掲げる事項の変更

遅滞なく届出が必要なもの

  • 金融商品取引業者の業務の内容又は方法の変更
  • 金融商品取引業者の取締役等の就任等
  • 金融商品取引業者の業務休止、又は再開
  • 金融商品取引業者である法人が、他の法人と合併したとき(当該金融商品取引業者である法人が合併により消滅したときを除く。)
  • 金融商品取引業者である法人が、分割により他の法人の事業(金融商品取引業等に係るものに限る。)の全部若しくは一部を承継したとき
  • 金融商品取引業者である法人が、他の法人から事業(金融商品取引業等に係るものに限る。)の全部若しくは一部を譲り受けたとき
  • 金融商品取引業者が銀行等について、その総株主等の議決権の過半数を取得し、又は保有したとき
  • 金融商品取引業者が、その総株主等の議決権の過半数を保有している銀行等が合併し、解散し、若しくは業務の全部を廃止したとき
  • 金融商品取引業者が、その総株主等の議決権の過半数を保有している銀行等についてその総株主等の議決権の過半数を保有しないこととなったとき
  • 金融商品取引業者が破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立てを行ったとき
  • 登録申請者が、法第29条の4第1項第1号イ(外国の法令により金商業に類する登録又は許可を取り消された場合に限る。)若しくはロ、第3号(重要な使用人に係る部分を除く。)又は第4号に該当したとき
  • 金融商品取引業者の役員又は重要な使用人が法第29条の4第1項第2号イからトのいずれかに該当したとき
  • 金融商品取引業者の親法人等又は子法人等に該当し、又は該当しないこととなった場合
  • 金融商品取引業者の持株会社に該当し、又は該当しないこととなった場合
  • 金融商品取引業者が破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立てが行われた事実を知った場合
  • 金融商品取引業者の定款の変更
  • 金融商品取引業者の役職員に法令等に反する行為(事故等)があったことを知った場合
  • 金融商品取引業者の役職員の法令に反する行為(事故等)の詳細が判明した場合
  • 金融商品取引業者が訴訟若しくは調停の当事者となった場合
  • 金融商品取引業者が訴訟若しくは調停が終結した場合
  • 外国法人又は外国に住所を有する個人が外国の法令に基づく不利益処分を受けた場合

30日以内に届出が必要なもの

  • 金融商品取引業者である個人が死亡したとき
  • 金融商品取引業等を廃止したとき
  • 金融商品取引業者等である法人が合併により消滅したとき
  • 金融商品取引業者等である法人が破産手続開始の決定により解散したとき
  • 金融商品取引業者等である法人が合併及び破産手続開始の決定以外の理由により解散したとき
  • 金融商品取引業者等である法人が分割により事業(金融商品取引業等に係るものに限る。)の全部又は一部を承継させたとき
  • 金融商品取引業者等が事業の全部又は一部を譲渡(金融商品取引業等に係るものに限る。)したとき

直ちに届出が必要なもの

金融商品取引業者等が金融商品取引業等(投資助言・代理業を除く)を廃止し、合併(当該金融商品取引業等が合併により消滅する場合の当該合併に限る。)をし、合併及び破産手続開始の決定以外の理由による解散をし、分割による事業の全部若しくは一部の承継をさせ、又は事業の全部若しくは一部の譲渡をしようとするときの公告をした旨

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