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第二種金融商品取引業の登録

登録手続

第二種金融商品取引業とは

 金融商品取引法では、金融商品取引行為を業として行うには、内閣総理大臣の登録を受けなければならないと定められています。

 第二種金融商品取引業は、金融商品取引法に規定される金融商品取引業の類型のひとつで、次のいずれかの業を行うことをいいます。

  1. 有価証券(投資信託の受益証券、抵当証券、集団投資スキーム持分、受益証券発行信託の受益証券)の募集または私募(いわゆる自己募集)
  2. いわゆる「みなし有価証券」について、売買・市場デリバティブ取引・外国市場デリバティブ取引、当該取引の媒介・取次・代理、当該取引の委託の媒介・取次・代理、有価証券等清算取次、売出し、募集・売出し・私募の取扱い
  3. 有価証券に関連しない市場デリバティブ取引または外国市場デリバティブ取引、当該取引の媒介・取次・代理、当該取引の委託の媒介・
    取次・代理、当該取引についての有価証券等清算取次
  4. 委託者指図型投資信託の受益証券及び外国投資信託の受益証券についての転売を目的としない買取り

 信託受益権は「みなし有価証券」とされていますので、不動産信託受益権の売買や媒介・私募の取扱い等を業として行うためには、第二種金融商品取引業の登録を受ける必要があります。

不動産信託受益権等売買等業務

 第二種金融商品取引業のうち、宅地もしくは建物に係る信託の受益権(不動産信託受益権)、または主として不動産信託受益権に対する投資を出資対象事業とする集団投資スキーム持分の売買その他の取引に係る業務を「不動産信託受益権等売買等業務」といいます(金融商品取引業等に関する内閣府令第7条括弧書)。
 不動産信託受益権等売買等業務については、通常の第二種金融商品取引業を行う場合の人的構成の審査基準に加え、宅地又は建物の取引に関する専門的知識及び経験を有する者の配置等の基準が定められています。

登録拒否事由

 第二種金融商品取引業の登録拒否事由は、次のとおりです。

  1. 金融商品取引業の登録等を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者であるとき
  2. 金融商品取引業の登録取消処分に係る通知があった日から処分等を決定する日までの間に金融商品取引業の廃止等の届出をした者等について、当該届出の日から5年を経過しない者であるとき
  3. 金融商品取引法等の金融関連法令等に違反し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者であるとき
  4. 他に行う事業が公益に反すると認められる者であるとき
  5. 金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない者であるとき
  6. 金融商品取引業を適確に遂行するための必要な体制が整備されていると認められない者であるとき
  7. 法人である場合、役員又は政令で定める使用人のうちに、次のいずれか(欠格事由)に該当する者のある者であるとき
    • 成年被後見人若しくは被保佐人 
    • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
    • 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終り、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
    • 金融商品取引業者であった法人が金融商品取引業の登録等を取り消されたことがある場合において、その取消しの日前30日以内にこれらの法人の役員であった者でその取り消しの日から5年を経過しない者
    • 金融商品取引業者であった個人が金融商品取引業の登録等を取り消されたことがある場合において、その取消しの日から5年を経過しない者
    • 金融商品取引業の登録取消処分に係る通知があった日から処分等を決定する日までの間に金融商品取引業の廃止等の届出をした者等が法人であった場合において、当該法人の役員であった者で、当該届出の日から5年を経過しない者
    • 個人であって、金融商品取引業の登録取消処分に係る通知があった日から処分等を決定する日までの間に金融商品取引業の廃止等の届出をした者等について、当該届出の日から5年を経過しない者
    • 金融商品取引法に基づき解任若しくは解職を命ぜられた役員でその処分を受けた日から5年を経過しない者
    • 金融商品取引法等の金融関連法令の規定若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、又は刑法もしくは暴力行為等処罰に関する法律の刑を犯し、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  8. 個人である場合、申請者又は政令で定める使用人のうちに、7に掲げる欠格事由に該当する者のある者であるとき
  9. 法人であって、資本金の額が政令で定める金額(1000万円)に満たない者であるとき
  10. 法人であって、国内に営業所又は事務所を有しない者であるとき
  11. 外国法人であって、国内における代表者を定めていない者であるとき
  12. 協会(一般社団法人第二種金融商品取引業協会)に加入しない者であって、協会の定款その他の規則(有価証券の売買その他の取引等を公正かつ円滑にすること又は投資者の保護に関するものに限る。)に準ずる内容の社内規則(当該者又はその役員若しくは使用人が遵守すべき規則をいう。)を作成していないもの又は当該社内規則を遵守するための体制を整備していない者であるとき

人的構成の審査

 上記のとおり登録拒否事由は数多くありますが、上記5の「人的構成」をどのようにクリアするかが鍵となると言っても過言ではありません。

 具体的には、次に該当する者であると認められる場合には登録が拒否されます(金融商品取引業等に関する内閣府令第13条)。

  1. その行う業務に関する十分な知識及び経験を有する役員又は使用人の確保の状況並びに組織体制に照らし、当該業務を適正に遂行することができないと認められること
  2. 役員又は使用人のうちに、経歴、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第2号に規定する暴力団又は同条第6号に規定する暴力団員との関係その他の事情に照らして業務の運営に不適切な資質を有する者があることにより、金融商品取引業の信用を失墜させるおそれがあると認められること

 さらに不動産信託受益権等売買等業務を行う場合には、上記に加え次の人的構成要件基準が定められています。

  1. 宅地又は建物の取引に関する専門的知識及び経験を有する役員又は使用人を次に掲げる部門にそれぞれ配置していること
    • 不動産信託受益権等売買等業務の統括に係る部門
    • 内部監査に係る部門
    • 法令等を遵守させるための指導に関する業務に係る部門
  2. 不動産信託受益権等売買等業務を行う役員又は使用人が、業府令第85条(不動産信託受益権の売買その他の取引に係る契約締結前交付書面の記載事項の特則)第1項各号に掲げる事項について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をするために必要な宅地又は建物の取引に関する専門的知識及び経験を有していること

 「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」では、人的構成の審査にあたっては、登録申請書、添付書類及びヒアリングによって次の点を確認するものとしています(監督指針V-3-1(1))。

①その行う業務に関する十分な知識及び経験を有する役員又は使用人の確保の状況及び組織体制として、以下の事項に照らし、当該業務を適正に遂行することができると認められるか。

イ. 経営者が、その経歴及び能力等に照らして、金融商品取引業者としての業務を公正かつ的確に遂行することができる十分な資質を有していること。
ロ. 常務に従事する役員が、金商法等の関連諸規制や監督指針で示している経営管理の着眼点の内容を理解し、実行するに足る知識・経験、及び金融商品取引業の公正かつ的確な遂行に必要となるコンプライアンス及びリスク管理に関する十分な知識・経験を有すること。
ハ. 行おうとする業務の適確な遂行に必要な人員が各部門に配置され、内部管理等の責任者が適正に配置される組織体制、人員構成にあること。
ニ. 営業部門とは独立してコンプライアンス部門(担当者)が設置され、その担当者として知識及び経験を有する者が確保されていること。
ホ. 行おうとする業務について、次に掲げる体制整備が可能な要員の確保が図られていること。
 a.帳簿書類・報告書等の作成、管理
 b.ディスクロージャー
 c.リスク管理
 d.電算システム管理
 e.売買管理、顧客管理
 f.広告審査
 g.顧客情報管理
 h.苦情・トラブル処理
 i.内部監査

②暴力団又は暴力団員との関係その他の事情として、以下の事項を総合的に勘案した結果、役員又は使用人のうちに、業務運営に不適切な資質を有する者があることにより、金融商品取引業の信用を失墜させるおそれがあると認められることはないか。

イ. 本人が暴力団員であること(過去に暴力団員であった場合を含む。)。
ロ. 本人が暴力団と密接な関係を有すること。
ハ. 金商法等我が国の金融関連法令又はこれらに相当する外国の法令の規定に違反し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたこと。
ニ. 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定(同法第32条の2第7項の規定を除く。)若しくはこれに相当する外国の法令の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたこと。
ホ. 禁錮以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられたこと(特に、刑法第246条から第250条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝及びこれらの未遂)の罪に問われた場合に留意すること。)。

「名義貸し」「無登録営業の幇助」に注意!

 不動産マーケットにおいては、現物不動産も信託受益権化されたものもあまり区別されずに情報が流通しているのが実態です。

 特に、規模がそれほど大きくない投資用物件の場合、仮に信託受益権であったとしても、購入者が信託継続を望まず、信託受益権売買と同時に信託が解除される方法で取引されることが多く、購入する側も金融商品を購入しているという意識は殆どないと思われます。

 マーケットの実態がどうであれ、第二種金融商品取引業の登録を受けなければ信託受益権の売買をすることはできませんが、中小の不動産業者にとってそのハードルは決して低くはありません。

 逆に言えば、第二種金融商品取引業の登録ができれば、ビジネスチャンスが広がることは間違いないのですが、ここに落とし穴があります。

 実際には第二種金融取引業の登録をしていない業者(無登録業者)が客付けをしているにもかかわらず、形式上は第二種金融取引業者が媒介を行ったようにしておき、業者間で手数料(媒介報酬)を配分するというようなことが行われている、という話をよく耳にします。

 このような行為は、無登録営業の幇助、あるは名義貸しにあたる可能性が高いです。

 このような事実が発覚した場合には、当該第二種金融商品取引業者は、業務停止処分、最悪の場合には登録取消処分を受ける可能性があります。

 それだけにとどまらず、無登録営業には刑事罰(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらの併科)が科せられることになっていますので、あわせてご注意ください。

 不動産信託受益権の売買の媒介を行うことができるのは、第二種金融商品取引業として登録を受けた者であり、名目如何にかかわらず、無登録業者が関与して報酬を受領することはできないことを肝に銘じてください。

登録申請手続

登録手続の流れ

登録手続の流れ

 第二種金融商品取引業の登録は、所定の様式に基づいた申請書を作成し、所定の添付書類と併せて、本店等の所在地を管轄する財務局長等に提出することによって行います。

 実務的には、登録申請書の提出に先立って、概要書、質問票等と呼ばれる書面を財務局等に提出し、事前相談を行うことが通例となっています。

登録申請に必要な書類

 登録申請の際は、以下の申請書及び添付書類が必要となります。

1登録申請書
2登録申請者の誓約書
3業務の内容及び方法を記載した書面
4業務に係る人的構成及び組織等の業務執行体制を記載した書面
5役員及び重要な使用人の履歴書
6役員及び重要な使用人の住民票の抄本等
7役員及び重要な使用人の身分証明書
8役員及び重要な使用人の「登記されていないことの証明書」
9役員及び重要な使用人の誓約書
10特定関係者の状況を記載した書面
11不動産信託受益権等売買業務を行う場合、内閣府令第13条第4号に掲げる基準に該当しないことを証する書面
12定款
13登記事項証明書
14最終の貸借対照表及び損益計算書
15印鑑証明書
16登録免許税領収書



登録完了後に行うこと

標識の掲示

 金融商品取引業者は、営業所・事務所ごとに、公衆の見やすい場所に法令で定められた様式に従って作成した標識を掲示しなければならないとされています(金融商品取引法第36条の2第1項)。
標識

勧誘方針の公表

 金融商品販売業者等は、業として行う金融商品の販売等に係る勧誘をしようとするときは、あらかじめ勧誘方針を定める必要があり、さらに勧誘方針を定めたときには速やかに公表しなければならないとされています(金融商品の販売等に関する法律第10条)。

 勧誘方針において定めるべき事項は以下のとおりです。

  1. 勧誘の対象となる者の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品の販売に係る契約を締結する目的に照らし配慮すべき事項
  2. 勧誘の方法及び時間帯に関し勧誘の対象となる者に対し配慮すべき事項
  3. 前二号に掲げるもののほか、勧誘の適正の確保に関する事項

金融ADR制度への対応

 ADR(Alternative Dispute Resolution)とは「裁判外紛争解決手続制度」のことであり、投資家保護の観点から、より簡易・迅速な形でのトラブル処理を図るために、金融商品取引法において取り入れられた制度です。

金融商品取引法では、金融ADR制度の対応について次のように定めています(金融商品取引法第37条の7)。

指定紛争解決機関が存在する場合一の指定紛争解決機関との間で手続基本契約を締結する。
指定紛争解決機関が存在しない場合代替措置として、苦情処理措置、紛争解決措置をそれぞれ講じる。

 第二種金融商品取引業務については指定紛争解決機関が存在しないため、苦情処理措置、紛争解決措置について、次の中からいずれか(あるいは複数の措置)を選択することになります。

苦情処理措置

  1. 苦情処理に関する業務についての社内体制・規則整備及び顧客への周知(苦情の申出先の顧客への周知と社内体制・規則の公表)
  2. 金融商品取引業協会又は認定投資者保護団体が行う苦情の解決による苦情処理
  3. 消費生活専門相談員等の助言指導
  4. 他業種の指定紛争解決機関による苦情処理など

紛争解決措置

  1. 金融商品取引業協会又は認定投資者保護団体のあっせんによる紛争解決措置
  2. その他の第三者機関(弁護士会、消費生活センター等)による紛争解決措置
  3. 他業種の指定紛争解決機関による紛争解決措置など

協会への加入

 「一般社団法人第二種金融商品取引業協会」は、金融商品取引法第78条第1項の規定に基づき、認定金融商品取引業協会としての認定を受けた自主規制機関です。

 平成26年の金融商品取引法の改正により、以下の登録拒否事由が追加されました。

協会(一般社団法人第二種金融商品取引業協会)に加入しない者であって、協会の定款その他の規則(有価証券の売買その他の取引等を公正かつ円滑にすること又は投資者の保護に関するものに限る。)に準ずる内容の社内規則(当該者又はその役員若しくは使用人が遵守すべき規則をいう。)を作成していないもの又は当該社内規則を遵守するための体制を整備していない者であるとき

このため、新規登録業者だけなく既存の登録業者についても、

  1. 協会に加入する(加入にあたり、協会の自主規制ルールに適合するように社内態勢・規程等の整備を行う)
  2. 協会には加入せず、協会の諸規則に準ずる社内規程等の整備及び態勢構築を行う

のいずれかの対応をする必要があります。

一般社団法人第二種金融商品取引業協会

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著者: 一般社団法人不動産ビジネス専門家協会
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