コンプライアンス態勢構築から、内部監査、社内研修、各種契約書の作成に至るまで、「不動産信託受益権」の取引を全面的にサポートします。

003top

不動産信託受益権の取引実務

取引実務

金融商品取引業者の行為規制

 信託受益権は金融商品であるため、その取引にあたっては金融商品取引法の規定を遵守する必要があります。

 第二種金融商品取引業者に課せられる主な行為規制は下記のとおりです。

  • 顧客に対する誠実義務(金融商品取引法第36条)
  • 標識の掲示(金融商品取引法第36条の2)
  • 名義貸しの禁止(金融商品取引法第36条の3)
  • 広告等の規制(金融商品取引法第37条)
  • 取引態様の事前明示義務(金融商品取引法第37条の2)
  • 契約締結前の書面の交付(金融商品取引法第37条の3)
  • 契約締結時等の書面の交付(金融商品取引法第37条の4)
  • 指定紛争解決機関との契約締結義務等(金融商品取引法第37条の7)
  • 虚偽のことを告げる行為の禁止(金融商品取引第38条第1号)
  • 不確実な事項について断定的判断の提供等の禁止(金融商品取引第38条第2号)
  • 契約締結前交付書面等の交付に関し、あらかじめ適合性の原則に従って当該顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明をすることなく、金融商品取引契約を締結する行為の禁止(金融商品取引法第38条第7号、業府令第117条第1項第1号)
  • 金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為の禁止(金融商品取引法第38条第7号、業府令第117条第1項第2号)
  • 顧客等に対する特別の利益を提供する行為の禁止(金融商品取引法第38条第7号、業府令第117条第1項第3号)
  • 金融商品取引契約の締結又は解約に関し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をする行為の禁止(金融商品取引法第38条第7号、業府令第117条第1項第4号)
  • 金融商品取引契約に基づく債務の全部又は一部の履行を拒否し、又は不当に遅延させる行為の禁止(金融商品取引法第38条第7号、業府令第117条第1項第5号)
  • 顧客に迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為の禁止 (金融商品取引法第38条第7号、業府令第117条第1項第7号)
  • 損失補てん等の禁止(金融商品取引法第39条)
  • 適合性の原則(金融商品取引法第40条第1号)
  • 顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況等にないこと(金融商品取引法第40条第2号、業府令第123条第1項第6号、第7号)

不動産信託受益権の取引方法と取引態様

取引方法1 現物不動産を信託し、信託受益権を売買

 現物不動産の所有者が当初委託者として受託者との間で信託契約を締結し、取得した信託受益権を譲渡する取引です。
(実務的には、信託契約の締結と信託受益権の譲渡は同日に行うことが多い。)
現物不動産を信託し、信託受益権を売買

 なお、当初委託者兼当初受益者が信託受益権を譲渡する行為は、「有価証券の売買」ではなく「有価証券の発行」という扱いになり、この譲渡を仲介する行為は「私募の取扱い」に該当します(金融商品取引法制定時のパブリックコメント回答)。

取引方法2 既存の信託受益権の売買

 既存の信託受益権を売買し、買主も引き続き信託受益権として保有する取引です。ファンド同士の取引等ではこのような取引が多いです。
既存の信託受益権の売買

取引方法3 信託受益権の売買後、即日信託解除を行う

 すでに信託受益権化されている物件につき、買主が引き続き信託受益権で保有することを望まないケースで行なわれる取引です。
 具体的には、現受益者との間の信託受益権売買契約の実行後、直ちに(同日に)新受益者となった買主と受託者との間で信託契約を解除し、信託解除に伴う信託財産の引継として現物不動産が交付されることになります。
信託受益権の売買後、即日信託解除を行う

取引態様の明示義務

 金融商品取引業等は、顧客から有価証券の売買等に関する注文を受けたときは、あらかじめ、その者に対し自己がその相手方となって当該売買若しくは取引を成立させるか、又は媒介し、取次ぎし、若しくは代理して当該売買若しくは取引を成立させるかの別を明らかにする必要があります(取引態様の明示義務:金融商品取引法第37条の2)。

適合性の原則と顧客属性の把握

 金融商品取引業者は、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘をしてはならないとされています(金融商品取引法第40条)。このことを「適合性の原則」といいます。

 適正な勧誘を行うためには、勧誘に先立ち顧客の属性を把握することが不可欠です。

 そのため、顧客毎に「顧客カード」を作成し、それぞれの顧客の投資以降、投資経験等を十分に確認することが求められています(下記「監督指針」・「検査マニュアル」参照)。

 顧客の投資意向、投資経験等の顧客属性等を適時適切に把握するため、顧客カード等の作成に当たっては、顧客の投資目的・意向を十分確認して作成し、顧客カード等の登録内容を金融商品取引業者と顧客の双方で共有しているか。また、顧客の申し出に基づき、顧客の投資目的・意向が変化したことを把握した場合には、顧客カード等の登録内容の変更を行い、変更後の登録内容を金融商品取引業者と顧客の双方で共有するなど、投資勧誘に当たっては、当該顧客属性等に則した適正な勧誘に努めるよう役職員に徹底しているか。

(金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針)

① 営業員の顧客に対する投資勧誘行為は、顧客の属性や投資目的等に配慮する等投資者保護の観点から適切なものとなっているか。
② 顧客の投資意向及び投資経験等の顧客属性について、顧客カード等による適切な管理が行われているか。

(金融商品取引業者等検査マニュアル)

特定投資家制度

 知識、経験及び財産の状況から、金融商品取引に係る適切なリスク管理を行うことが可能と考えられる者を「特定投資家」と位置付け、金融商品取引業者の相手方が特定投資家である場合、下記の行為規制を適用除外としています。

  • 第37条(広告等の規制)
  • 第37条の2(取引態様の事前明示)
  • 第37条の3(契約締結前の書面の交付)
  • 第37条の4(契約締結時の書面の交付)
  • 第37条の5(保証金の受領に係る書面の交付)
  • 第37条の6(クーリングオフ)
  • 第38条第4号から第6号まで(不招請勧誘の禁止、勧誘受諾の意思不確認の禁止、再勧誘の禁止)
  • 第40条第1号(適合性の原則)
  • 第40条の2第4項(最良執行方針等記載書面交付)
  • 第43条の4(顧客の有価証券を担保に供する行為等の制限)

特定投資家・一般投資家の区分

 顧客が「特定投資家」に該当するか、「特定投資家以外の投資家(一般投資家)」に該当するかによって金融商品取引業者がなすべき行為が異なるため、取引を行う前に顧客の投資家区分を確認する必要があります。

 特定投資家に該当する者は法令によって定められていますが、さらに顧客の意思で「特定投資家から一般投資家へ移行」(アマ成り)する、あるいは「一般投資家から特定投資家へ移行」(プロ成り)することができる場合があるので注意が必要です。

特定投資家一般投資家へ移行不可国、日本銀行、適格機関投資家
一般投資家へ移行可・上場会社
・金融商品取引業者(適格機関投資家以外)
・適格機関投資家等特例業務届出者である法人
・特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人
・投資者保護基金
・預金保険機構
・農水産業協同組合貯金保険機構
・保険契約者保護機構
・特定目的会社(適格機関投資家以外)
・取引の状況その他の事情から合理的に判断して資本金の額が5億円以上であると見込まれる株式会社
・外国法人
一般投資家特定投資家へ移行可・地方公共団体
・法人(特定投資家以外)
・任意組合・匿名組合等の運営者である個人(出資合計額が3億円以上の組合であり、全組合員の同意を取得することが条件)
・以下の要件をすべて満たす個人
 =取引状況等から合理的に判断して、純資産額が3億円以上と見込まれること。
 =取引状況等から合理的に判断して、投資性のある金融資産額が3億円以上と見込まれること。
特定投資家へ移行不可上記以外の個人

特定投資家から一般投資家への移行(アマ成り)

  • 金融商品取引業者は、アマ成りが可能な顧客に対して、金融商品取引契約を締結するまでに、「一般投資家への移行申出ができる」旨を告知しなければなりません。
  • 金融商品取引業者は、アマ成り可能な顧客からアマ成り申出を受けた場合には、これを承諾しなければなりません。
  • 金融商品取引業者は、アマ成り申出を承諾する場合には、当該顧客に対して下記の事項を記載した書面を交付しなければなりません。
  1. 承諾日
  2. 対象契約の属する契約の種類
  3. 承諾日以降、対象契約の締結の勧誘または締結する場合には、一般投資家として取り扱う旨
  4. 申出者は、承諾を行った金融商品取引業者等のみから対象契約に関して一般投資家として取り扱われることになる旨
  5. 金融商品取引業者等が対象契約に基づき申出者を代理して他の金融商品取引業者等との間で承諾日以後に締結する金融商品取引契約については、当該他の金融商品取引業者等からも一般投資家して取り扱われる旨

一般投資家から特定投資家への移行(プロ成り)

  • プロ成りが可能である旨を告知する義務はありません。
  • 顧客がプロ成りの申出をした場合であっても、金融商品取引業者に承諾する義務はありません。
  • プロ成り申出を承諾する場合には、あらかじめ、次に掲げる事項を記載した書面により、当該顧客の同意を得なければなりません。
  1. 承諾日
  2. 期限日 (= 原則として承諾日から起算して一年を経過する日)
  3. 対象契約の属する契約の種類
  4. 当該申出者が次に掲げる事項を理解している旨
    イ 法第45条各号に掲げる規定は、対象契約に関して申出者が当該各号に定める者である場合(法第45条ただし書に規定する場合を除く。)には適用されない旨
    ロ 対象契約に関して特定投資家として取り扱われることがその知識、経験及び財産の状況に照らして適当ではない者が特定投資家として取り扱われる場合には、当該者の保護に欠けることとなるおそれがある旨
  5. 期限日以前に対象契約の締結の勧誘又は締結をする場合において、当該申出者を特定投資家として取り扱う旨
  6. 期限日後に対象契約の締結の勧誘又は締結をする場合において、当該申出者を一般投資家として取り扱う旨
  7. 期限日以前に締結した対象契約(投資顧問契約及び投資一任契約を除く。)に関して法令の規定又は契約の定めに基づいて行う行為については、期限日後に行うものであっても、申出者を特定投資家として取り扱う旨
  8. 申出に係る契約の種類が第53条第3号及び第4号に掲げるものである場合にあっては、対象契約(投資顧問契約及び投資一任契約に限る。)に関して法令の規定又は契約の定めに基づいて行う行為については、期限日以前に行うものに限り、申出者を特定投資家として取り扱う旨
  9. 申出者は、承諾を行った金融商品取引業者等のみから対象契約に関して特定投資家として取り扱われることになる旨
  10. 金融商品取引業者等が対象契約に基づき申出者を代理して他の金融商品取引業者等との間で期限日以前に締結する金融商品取引契約については、当該他の金融商品取引業者等からも特定投資家として取り扱われる旨
  11. 申出者は、承諾日以後いつでも、一般投資家への復帰申出ができる旨
  • さらに、申出者が個人の場合、上記の同意を得る前に、以下に掲げる事項を記載した書面を交付するとともに、申出者がプロ成り可能な者に該当することを確認する必要があります。

イ 法第45条各号に掲げる規定は、対象契約に関して申出者が当該各号に定める者である場合(法第45条ただし書に規定する場合を除く。)には適用されない旨
ロ 対象契約に関して特定投資家として取り扱われることがその知識、経験及び財産の状況に照らして適当ではない者が特定投資家として取り扱われる場合には、当該者の保護に欠けることとなるおそれがある旨

広告

金融商品取引法における広告等の規制

 金融商品取引業者が行う広告等の表示は、投資者への投資勧誘の導入部分にあたり、明瞭かつ正確な表示による情報提供が、適正な投資勧誘の履行を確保する観点から最も重要であることから(監督指針III -2-3-3参照)、金融商品取引商法では、広告等について(1)一定事項の表示義務、(2)誇大広告等の禁止、という2つの規制を定めています。

広告等の定義

 金融商品取引法では、「広告」そのものを定義した規定はないが、パブコメ回答において「一般的に広告とは、随時又は継続してある事項を広く(宣伝の意味も含めて)一般に知らせることをいうと考えられます」としています。

 また、内閣府令第72条では「郵便、信書便、ファクシミリ装置を用いて送信する方法、電子メールを送信する方法、ビラ又はパンフレットを配布する方法その他の方法により多数の者に対して同様の内容で行う情報の提供」を広告その他これに類似するもの(広告類似行為)と定義づけていますので、これらのものも規制の対象になります。

表示しなければならない事項

 信託受益権の売買等について広告等を行うときには、下記の事項を表示しなければなりません。

(1)金融商品取引業者の名称
(2)金融商品取引業者である旨及び登録番号
(3)顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの
手数料、報酬、費用その他いかなる名称によるかを問わず、金融商品取引契約に関して顧客が支払うべき対価(有価証券の価格又は保証金等の額を除く。)の種類ごとの金額若しくはその上限額又はこれらの計算方法の概要及び当該金額の合計額若しくはその上限額又はこれらの計算方法の概要とする。ただし、これらの表示をすることができない場合にあっては、その旨及びその理由。
顧客が行う金融商品取引行為について金利、通貨の価格、金融商品市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として損失が生ずることとなるおそれがある場合、「当該指標」、「当該指標に係る変動により損失が生ずるおそれがある旨及びその理由」
損失の額が保証金等の額を上回ることとなるおそれ(「元本超過損が生ずるおそれ」)がある場合にあつては、「前号の指標のうち元本超過損が生ずるおそれを生じさせる直接の原因となるもの」、「変動により元本超過損が生ずるおそれがある旨及びその理由」
金融商品取引契約に関する重要な事項について顧客に不利益となる事実
金融商品取引業協会に加入している場合は、その旨及び名称

表示方法

  1. 広告等をするときは、法定事項について「明瞭かつ正確に」表示しなければなりません。
  2. 広告等をするときは、令第十六条第一項第四号及び第五号に掲げる事項(リスク関係)の文字又は数字を当該事項以外の事項の文字又は数字のうち最も大きなものと著しく異ならない大きさで表示する必要があります。

誇大広告等の禁止

 金融商品取引業者等は、その行う金融商品取引業に関して広告等をするときは、次の事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはなりません。

  • 金融商品取引行為を行うことによる利益の見込み
  • 金融商品取引契約の解除に関する事項
  • 金融商品取引契約に係る損失の全部若しくは一部の負担又は利益の保証に関する事項
  • 金融商品取引契約に係る損害賠償額の予定(違約金を含む。)に関する事項
  • 金融商品取引契約に係る金融商品市場又は金融商品市場に類似する市場で外国に所在するものに関する事項
  • 金融商品取引業者等の資力又は信用に関する事項
  • 金融商品取引業者等の金融商品取引業(登録金融機関にあっては、登録金融機関業務)の実績に関する事項
  • 金融商品取引契約に関して顧客が支払うべき手数料等の額又はその計算方法、支払の方法及び時期並びに支払先に関する事項
    (以上、不動産信託受益権の売買に関するもののみ抜粋)

契約締結前交付書面

 金融商品取引業者等は、金融商品取引契約を締結しようとするときは、あらかじめ、顧客に対し、一定の事項を記載した書面(契約締結前交付書面)を交付する必要があります(金融商品取引法第37条の3)。

 なお、顧客が特定投資家である場合には、契約締結前交付書面を交付する必要はありません。

契約締結前交付書面の記載事項

 契約締結前交付書面については、記載すべき事項だけでなく、記載の順序、文字の大きさ等についても定めがあることに注意が必要です。

(1)冒頭に記載すべき事項
 下記事項を、12ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いて当該契約締結前交付書面の最初に平易に記載します。

  • 当該契約締結前交付書面の内容を十分に読むべき旨
  • 顧客の判断に影響を及ぼすこととなる特に重要なもの

(2)冒頭記載事項の次に枠に囲んで記載すべき事項
 上記(1)の次に、12ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いて明瞭かつ正確に記載します。

  • 手数料等に関する事項
  • 市場リスクに関する事項
  • 信用リスクに関する事項
  • クーリング・オフに関する事項

(3)その他の事項
 上記(1)及び(2)に続いて、以下の事項を8ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いて明瞭かつ正確に記載します。

  • 共通記載事項
      • 金融商品取引業者の商号、名称又は氏名及び住所
      • 金融商品取引業者等である旨及び当該金融商品取引業者等の登録番号
      • 当該金融商品取引業者等が行う金融商品取引業の内容及び方法の概要
      • 顧客が当該金融商品取引業者等に連絡する方法
      • 加入している金融商品取引業協会及び対象事業者となっている認定投資者保護団体の有無、名称
      • 指定紛争解決機関が存在する場合:指定紛争解決機関の商号又は名称
      • 指定紛争解決機関が存在しない場合:苦情処理措置及び紛争解決措置の内容
      • 当該金融商品取引契約の概要
      • 当該金融商品取引契約に関する租税の概要
      • 当該金融商品取引契約の終了の事由がある場合にあっては、その内容
  • 有価証券記載事項
      • 当該有価証券の譲渡に制限がある場合にあっては、その旨及び当該制限の内容
  • 信託受益権売買共通記載事項
      • 信託財産の種類、信託期間、信託財産の管理又は処分の方法及び信託財産の交付に関する事項
      • 信託財産の管理又は処分の権限を有する者及び権限の内容に関する事項(当該者が適格投資家向け投資運用業を行うことにつき法第29の登録を受けた金融商品取引業者であるときは、その旨を含む。)
      • 信託の設定時における第三者による信託財産の評価の有無その他信託財産の評価に関する事項
      • 信託行為において定められる信託受益権等(法第2条第2項の規定により有価証券とみなされる同項第1号又は第2号に掲げる権利に限る。)の譲渡手続に関する事項
      • 取引の種類の別
      • 売付けの代理若しくは媒介又は募集、私募若しくは売出しの取扱いの場合にあっては、売主又は買主に関する事項
      • 信託の目的
      • 受益者の権利義務に関する次に掲げる事項
        イ 受託者が受益者との間において、信託法第48条第5項(同法第54条第四項 において準用する場合を含む。)に規定する合意を行う定めがある場合(信託業法第29条の3の規定により信託会社が説明する場合を除く。)は、その旨及び当該合意の内容
        ロ 受益者の意思決定に関する特別の定めがある場合は、その旨及び当該定めの内容
        ハ 信託の変更、併合又は分割に関する特別の定めがある場合は、その旨及び当該定めの内容
        ニ 信託終了の事由に関する特別の定めがある場合は、その旨及び当該定めの内容
        ホ 信託の合意による終了に関する特別の定めがある場合は、その旨及び当該定めの内容
        ヘ 受託者の辞任及び新受託者の選任に関する特別の定めがある場合は、その旨及び当該定めの内容
      • 信託受益権等の損失の危険に関する次に掲げる事項
        イ 信託法第21条第1項第3号に掲げる権利に係る債務がある場合は、当該債務の総額及び契約ごとの債務の金額その他当該債務の内容に関する事項(当該債務が借入れである場合にあっては、総借入金額並びに契約ごとの借入先の属性、借入金額、返済期限、直前の計算期間の借入残高、計算期間及び借入期間における利率、返済方法、担保の設定に関する事項並びに借入れの目的及び使途を含む。)
        ロ イに掲げるもののほか、信託受益権について損失を生じるおそれのある債務がある場合は、その旨及び当該債務の総額その他の当該債務の状況
        ハ 信託債権、信託財産に設定された担保権その他当該信託受益権に優先する権利がある場合は、当該権利の内容
        ニ 信託受益権について信用補完が講じられている場合は、その旨及び当該信用補完の内容
        ホ 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第六条 の規定に基づき損失の補てん又は利益の補足を約する特約が付されている場合は、その旨及びその内容
      • 信託財産に関する租税その他の費用に関する事項
      • 信託財産の計算期間に関する事項
      • 信託財産の管理又は処分の状況の報告に関する事項
      • 受託者の氏名又は名称及び公告の方法
      • 信託財産である金銭を固有財産又は他の信託財産である金銭と合同運用する場合は、その旨及び当該信託財産と固有財産又は他の信託財産との間の損益の分配に係る基準
      • 当該金融商品取引契約が信託法第3条第3号に掲げる方法によってする信託に係る信託受益権等の売買その他の取引に係るものである場合にあっては、次に掲げる事項
        イ 信託法第3条第3号の公正証書その他の書面又は電磁的記録に記載され、又は記録された事項の内容
        ロ 受託者に係る信託業法第50条の2第1項の登録の有無及び同条第10項の調査の有無
        ハ 信託業法第50条の2第10項の調査が行われた場合には、当該調査の結果
        ニ 信託業法第50条の2第10項の調査が行われなかった場合であり、かつ、信託受益権等の売買その他の取引を行う者が当該信託の受託者と同一の者であるものについては、信託業法施行規則 第51条の7第1項各号に掲げる事項
      • 当該金融商品取引契約が信託法第2条第12項に規定する限定責任信託に係る信託受益権等の売買その他の取引に係るものである場合にあっては、第1号から第14号までに掲げるもののほか、次に掲げる事項
        イ 限定責任信託の名称
        ロ 限定責任信託の事務処理地
        ハ 給付可能額及び受益者に対する信託財産に係る給付は当該給付可能額を超えてすることはできない旨
  • 不動産信託受益権売買記載事項
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあっては、その名称)
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である宅地又は建物に係る都市計画法 、建築基準法その他の法令に基づく制限で宅地建物取引業法施行令第3条の2に規定する制限に関する事項の概要
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である宅地又は建物に係る私道に関する負担に関する事項
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である宅地又は建物に係る飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他宅地建物取引業法施行規則第19条の2の4に規定する事項
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である建物が建物の区分所有等に関する法律第2条第1項に規定する区分所有権の目的であるものであるときは、当該建物を所有するための一棟の建物の敷地に関する権利の種類及び内容、同条第4項に規定する共用部分に関する規約の定めその他の一棟の建物又はその敷地(一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又はこれに関する権利がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、その土地を含む。)に関する権利及びこれらの管理又は使用に関する事項で宅地建物取引業法施行規則第19条の2の5 各号に掲げるもの
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である宅地又は建物が宅地造成等規制法第20条第1項により指定された造成宅地防災区域内にあるときは、その旨
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である宅地又は建物が土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第6条第1項により指定された土砂災害警戒区域内にあるときは、その旨
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である宅地又は建物が津波防災地域づくりに関する法律第53条第1項により指定された津波災害警戒区域内にあるときは、その旨
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である建物(昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除く。)が建築物の耐震改修の促進に関する法律第4条第1項に規定する基本方針のうち同条第2項第3号 の技術上の指針となるべき事項に基づいて次に掲げる者が行う耐震診断を受けたものであるときは、その内容
        イ 建築基準法第77条の21第1項に規定する指定確認検査機関
        ロ 建築士法第2条第1項に規定する建築士
        ハ 住宅の品質確保の促進等に関する法律第5条第1項に規定する登録住宅性能評価機関
        ニ 地方公共団体
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である建物が住宅の品質確保の促進等に関する法律第5条第1項に規定する住宅性能評価を受けた新築住宅であるときは、その旨
      • 当該不動産信託受益権に係る信託財産である宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で次に掲げるものが講じられているときは、その概要
        イ 当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関する保証保険契約又は責任保険契約の締結
        ロ 当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関する保証保険又は責任保険を付保することを委託する契約の締結
        ハ 当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関する債務について銀行等が連帯して保証することを委託する契約の締結

宅地建物取引業法に基づく重要事項説明

 宅地建物取引業者は、(1)自己が当初委託者となっている信託受益権を自ら売主として売却する場合、又は(2)金融商品取引業者である宅地建物取引業者が(1)以外の信託受益権の売主として売却する場合又は売買の代理若しくは媒介をする場合には、相手方等に対して「重要事項説明」を行う必要があります(宅地建物取引業法第35条第3項、第50条の2の4)。

 説明すべき内容は金融商品取引法の契約締結前交付書面の「不動産信託受益権売買記載事項」と同一であり、金融商品取引法の契約締結前書面と宅地建物取引業法の重要事項説明書を一つの書面としても差支えないとされています(金融商品取引法制定時のパブリックコメント回答)。

 ただし、以下の相違点に留意する必要があります。

  • 金融商品取引法上の契約締結前交付書面を交付する相手方は「顧客」であるのに対し、宅地建物取引業法の重要事項説明を行う相手方は「取得しようとする者」すなわち買主とされています。したがって、売主から媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者についても、買主に対して重要事項説明を行う義務があります。
  • 金融商品取引法上の契約締結前交付書面については、説明する者の資格に関し制約が無いのに対し、宅地建物取引業法の重要事項の説明は、宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示して行う必要があります。
  • 金融商品取引法上の契約締結前交付書面については記名押印の定めが無いのに対し、宅地建物取引業法の重要事項説明書については宅地建物取引士が記名押印する必要があります。

金融商品の販売等に関する法律に基づく説明

 金融商品販売業者等は、金融商品の販売等を業として行おうとするときは、当該金融商品の販売等に係る金融商品の販売が行われるまでの間に、顧客に対し、市場リスク等の重要事項について説明しなければなりません(金融商品の販売等に関する法律第3条第1項)。

契約締結時交付書面

 金融商品取引業者等は、金融商品取引契約が成立したときその他内閣府令で定めるときは、遅滞なく、内閣府令で定めるところにより、書面を作成し、これを顧客に交付しなければなりません(金融商品取引法第37条の4)。

 なお、顧客が特定投資家である場合には、契約締結時交付書面を交付する必要はありません。

契約締結時交付書面の記載事項

 契約締結時交付書面に記載すべき事項は以下のとおりです。

共通記載事項■当該金融商品取引業者の商号、名称または氏名
■当該金融商品取引業者の営業所または事務所の名称
■当該金融商品取引の概要
■当該契約の成立年月日
■当該契約に係る手数料等に関する事項
■顧客の氏名
■顧客が当該金融商品取引業者に連絡する方法
有価証券売買取引
記載事項
■自己取引・委託取引の別
■売付けまたは買付けの別
■銘柄
■約定数量
■単価、対価の額等
■顧客が支払うこととなる金額及び計算方法
■取引の種類
■その他取引内容を的確に示すために必要な事項
■現金取引か信用取引かの別

ドキュメンテーション

 ドキュメンテーションとは、契約書等を作成することをいいます。

 信託案件、特にファンドが売主・買主となる案件の場合には、関係する当事者が多岐にわたるため、作成すべき契約書等の数も非常に多くなります。

(作成する契約書等の例)

共通■不動産信託受益権売買契約書
■信託受益権譲渡承諾依頼書(兼承諾書)
■媒介契約書
信託■信託契約変更契約書
■信託契約解除合意書
■受託者変更契約書
マスターリース
プロパティマネジメント
■マスターリース契約変更契約書
■プロパティマネジメント変更契約書
■ マスターリース契約解約合意書
■プロパティマネジメント契約解約合意書
■貸主変更通知書(兼承諾書)
金融商品取引法関連■契約締結前交付書面
■契約締結時交付書面
■特定投資家制度関連
(例)一般投資家への移行に関する告知書(兼告知受領書)
その他■精算に関する覚書
■書類、鍵の引渡書(兼受領書)




おすすめ書籍

不動産信託受益権取扱業者のための態勢構築と契約書式マニュアル

著者: 一般社団法人不動産ビジネス専門家協会
発行: 綜合ユニコム株式会社

 本書は、不動産信託の仕組みや法規制を理解する「不動産信託の基礎知識」から、第二種金融商品取引業へ登録するための「登録申請書の作成」、コンプライアンス態勢を構築すべく「社内規程の整備」「内部管理」、さらには不動産信託受益権の取引の流れと留意事項を整理した「取引実務」までを掲載しております。
 不動産信託受益権の取引を始めたい方から、第二種金融商品取引業を登録済みだが、コンプライアンス態勢や内部管理態勢を見直したい、具体的な信託受益権取引実務や契約書・法定書面の作成を学びたい方へのノウハウを網羅した実務資料となっています。

不動産信託受益権取扱業者のための態勢構築と契約書式マニュアル


 不動産信託、不動産ファンドについて学びたい場合には、こちらの本もおすすめです。


powered by Quick Homepage Maker 4.85
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional